大学入試御用達の中和滴定実験
食酢(中身はCH3COOHのみと仮定されている)の濃度を求める実験の問題。これを題材に取り上げるだけでいろんな角度から問題を出せるからしっかり勉強しておこう。
オススメは化学の資料集。これを熟読し、実験の流れを完璧に覚えておこう。「なぜ?」を理解しておかないと「説明しなさい」という問題が山ほど出てくるしね。ビュレット、ホールピペット、メスフラスコ、コニカルビーカーといった実験器具の使い方、水酸化ナトリウム水溶液の濃度はなぜシュウ酸標準溶液で滴定して濃度を決定しなければならないのか?ひとつひとつ「なぜ?」を追求しておかないと解答が書けない事態に陥ってしまう。
資料集や教科書を活用すれば、大抵のものは問題ありませんが・・・ここで質問。
標準溶液はなぜ「シュウ酸」を使うのか?
別に塩酸や硫酸でも問題ないのでは?と思ったことがある人もいると思います。これについて掲載されている資料は、あるにはあるのですが、多くの学生が目にするものには掲載されていない。
では、せっかくなので考えてみましょう。
この実験で使用されるシュウ酸は、正確には「シュウ酸二水和物(H2C2O4・2H2O)」という白い結晶が使用される。先にこの実験でシュウ酸二水和物を使用するメリットについてお伝えしておきますね。
・再結晶で簡単に純度の高いものが得られる
・秤量中に質量や成分が変化しない(潮解性、風解性がない)
・固体であるため正確に秤量可能
これらのメリットを覚えておけば、塩酸や硫酸が標準溶液として適切でない理由が見えてくる。
塩酸や硫酸の性質を思い出してほしい。
塩酸:「塩化水素+水」の水溶液。塩酸は揮発性の酸であり、溶質のHClが揮発して濃度が変化しやすい。
硫酸:不揮発性であるが、吸湿性を持ち合わせており、空気中の水分を吸収して濃度が変化しやすい。
これらのデメリットが考えられるはずだ。しっかりと覚えておいてほしい。
せっかくなので、おまけに水酸化ナトリウム(NaOH)が正確な秤量や濃度を得るのが難しいのはなぜか?
・固体だが潮解生が強く、大気中の水分を吸収しやすいため、正確な秤量ができない
・空気中のCO2を吸収して表面から次第にNa2CO3に変化していくので正確な秤量ができない
「正確な秤量ができない」=「正確な濃度の溶液を作ることはできない」
だから、わざわざシュウ酸標準溶液を調整して、実験に使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度を決定する必要があるわけだ。ちなみに、最初につくったシュウ酸水溶液のことを一次標準溶液、一次標準溶液を使用して濃度決定した水酸化ナトリウム水溶液のことを二次標準溶液という。