再生繊維とは「セルロースを加工したもの」である。
セルロースって聞くと「植物の細胞壁だ!」と思う人が多いでしょう。
植物の細胞壁?! え?! あんなにガチガチなものをどうやって加工するのさ?
その通り。そのままの状態で加工するのは難しい。
だから、不便な状態を一度ドロドロに溶かして再び繊維状にする。
加工しにくいガチガチ状態 → 一度ドロドロに溶かしてしまう → 再び繊維状にする
このような過程を辿るため「再生繊維」と言われる。
大学入試の化学でよく聞かれるのは下記の2つである。
ビスコースレーヨン
銅アンモニアレーヨン(キュプラ)
名前は聞いたことあるけれども、それ・・・嫌い・・・
と言う人が多いでしょう。授業でほとんど扱われず進んでしまうからね。
名前、作り方、用途くらいは最低限覚えておこう。
★ビスコースレーヨン(用途:セロハンテープなど)
①ろ紙(ほぼ純粋なセルロース)を濃NaOH水溶液に浸す → アルカリセルロース(半透明)になる
②アルカリセルロースを粉砕して二硫化炭素(CS2)に浸す → セルロースキサントゲン酸ナトリウム になる
③希NaOH水溶液に加える → ビスコース(赤褐色透明のコロイド溶液) になる
④ビスコース を注射器から希硫酸中に押し出す → ビスコースレーヨン になる
⑤得られたビスコースレーヨンを水洗い、乾燥させる
※セルロースキサントゲン酸は酢酸とほぼ同程度の弱酸である。よってセルロースキサントゲン酸ナトリウムに強酸を加えると、セルロースキサントゲン酸が遊離する。さらに酸性条件下では加水分解してセルロースと二硫化炭素が再生するという流れになる。
★銅アンモニアレーヨン(キュプラ)(用途:スーツの裏地など)
①水酸化銅(Ⅱ)を濃アンモニア水に溶かす → シュバイツァー試薬(シュワイツァー試薬とも言う)
②ほぐした脱脂綿(ほぼ純粋なセルロース)をシュバイツァー試薬に加える → ドロドロになる(粘性が高くなる)まで加える
③注射器で希硫酸中に押し出す → 銅アンモニアレーヨン(青色の糸状物質)になる
④希硫酸中に押し出された青色の糸状物質は、青色が抜けるまで浸しておく。
⑤得られた 銅アンモニアレーヨン を水洗い、乾燥させる
<シュバイツァー試薬について>
CuSO4硫酸銅(Ⅱ)でシュバイツァー試薬を作ることは可能か?
シュバイツァー試薬とは「深青色の強塩基性の溶液」である。硫酸銅(Ⅱ)に濃アンモニア水を加えただけの溶液ではセルロースを溶かすことはできない。テトラアンミン銅(Ⅱ)イオンを含んだ高濃度で強塩基性の溶液にする必要がある。硫酸銅(Ⅱ)水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて水酸化銅(Ⅱ)を沈殿させ、ろ過して水分を切る(この沈殿をさらに水洗いして硫酸イオンを除去するのがベスト)。この水酸化銅(Ⅱ)の沈殿に濃アンモニア水を加えるとシュバイツァー試薬ができる。