教育課程が変わり、物理Ⅰ・Ⅱという括りから「物理基礎」「物理」という括りに変わりましたね。さらに「物理基礎」は文系、理系問わず高校に入学すれば全員が必修受講ということになった。物理Ⅰに比べれば随分と分量が抑えられている形にはなっていますが、昔の教育課程で学習してきた人たちにとってこのルールは「文系の子でも物理を勉強しなきゃいけないの?」と思うほどの衝撃があったかと思います。塾でも物理に関する質問、悩みはよく相談されますね。
そこで、ひとつアドバイスです。
物理の学習でこれをやってしまうと「絶対に苦手科目になる」というポイントがあります。
【公式の丸暗記だけでなんとかしようとする】というものです。
もちろん、問題演習の量をこなせば公式を勝手に暗記してしまうということはありますが、問題はその中身です。
例えば「運動方程式って何?」と言われれば誰だって「ma = F」と答えるでしょう。シンプルな式なので一回見れば覚えられるレベルです。
m : 質量(kg) a : 加速度(m/s2) F : 力 (N)
※N = kg・m/s2( 質量×距離 / 時間2 で成り立っていると知っていることも重要)
ここまで覚えたらもう大丈夫・・・ではありません。ここで理解が止まってしまうといずれ物理が苦手科目になってしまいます。
もう少し突っ込んで【数式の意味】を紐解いてください。
<加速度aが一定の場合 F = am Fとmは比例>
質量mが【大きい】場合は力Fが【大きくなる】
質量mが【小さい】場合は力Fが【小さくなる】
<質量mが一定の場合 F = ma Fとaは比例>
加速度aが【大きい】場合は力Fが【大きくなる】
加速度aが【小さい】場合は力Fが【小さくなる】
< 力Fが一定の場合 ma = F mとaは反比例>
質量mが【大きい】場合は加速度aが【小さくなる】
質量mが【小さい】場合は加速度aが【大きくなる】
また、教科書を見るとa やFの頭に「→」がついていますよね?
ただの矢印と思っていい加減に処理してはいけません。
ベクトルと言って「向き」があるものということですね。
式を眺めて得られた情報から結論(公式の意味)をまとめる。
・物体は力を加えた方向に加速していく。
・力Fを大きくすると加速度aは大きくなる。(力Fを小さくすると加速度aは小さくなる。)
・質量が大きいと加速しにくい。(質量が小さいと加速しやすい。)
数式の意味を言語化しました。
さらに「イメージ化」していきます。
・ダンプカーのような大きな質量を持つ物体がどんどん加速していくと、大きな力を持ちます。
・小さな車でダンプカーと同じような力を持たせるには加速度を大きくしなければいけません。
・米粒を右に動かしたければ、わずかな力で右方向に引っ張れば簡単にできる。
などなど。
こんなふうに具体的に「イメージ」できるまで数式を読み込んでいくことが
物理では大切なことなのです。
「力学」の超重要公式にスポットを当ててみましたが、これから熱、波動、電磁気、原子といった単元が待ち構えています。歴史上に名を残す天才物理学者たちが見つけ出した数式はシンプルにまとまっており、簡単に暗記できてしまうものも多い。簡単に暗記できるものこそ、その意味をしっかり理解し、物理現象をイメージできるようにしておかなければなりません。
今回は公式から物理現象をイメージしていきましたが、物理現象をイメージして忘れた公式を導き出すことも可能になります。「暗記が嫌いだから物理を選んだ」と言い、やたらと物理が得意な人がいますよね。彼らは数式の「なぜ?」を具体的にイメージできるまで追求しているのです。
これから物理を学習していくなかで、なかなかイメージできずに苦しむこともあるとは思いますが、その方向性は間違っていません。イメージできるまで何度もチャレンジしてくださいね。
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